はじめての○○

はじめての何かに挑戦してみる。

私が大好きな作家「辻村深月」の話をする

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趣味は読書と言えるか悩む

自己紹介が必要な時には、「趣味は旅行と映画です」といつも言っている。なにそのテンプレ的な答え。全然個性がない。全然印象に残らない。と自分でも思うけど、本当にそれが趣味だから仕方ないと思う。そして、もうひとつ追加で趣味を言ってみるとすれば、読書かなと思う。これまたテンプレかよって感じだけど、本当にそうなので仕方ない。

 

学生のころは絶対に本を持ち歩いて通学時間に読んでいたし、小学生のころは毎日図書室に通い詰めて手当たり次第に本を読んでいた。クラスの中で一番本を借りた人という称号が誇らしかったのを今でも覚えています。ですが、社会人になって、本を読める時間は格段に減ったというか、最早ないに等しい。本を読む時間が取れるなら、仕事関係の勉強の本を読んでしまうので、娯楽としての読書をする時間が本当になくなってしまった。学生のころ、暇な日は毎日3時間くらい読んでいたのに。

そういう背景もあって、胸を張って「私の趣味は読書です」とは言えなくなってしまいました。

 

 

読書の楽しいところって、今の自分じゃ知らない世界をみられるところ、違う世界に連れて行ってくれるところみたいな、よく言う『世界観を広げる』的な部分のほかに、そういえばこんなことあったな、忘れていた感情を思い出すみたいな『あの頃の私にまた会える』ってところがあると思う。

本屋さんにいる時のわくわく感。早く買った本を読みたい。そんな興奮がとても楽しい。

 

学生の頃は世界観を広げてくれる本がとても好きだった。自分の世界が学校やバイト先しかなかったのもあるのだろうと思う。どっちも好きなんだけど、どちらかと言えば最近は昔の感覚を思い出せる本がとても好きです。

多分、昔の感覚って高校生とかそれ以前のもっと小さいときの記憶で、今生活しているとどんどん忘れて行ってしまうような感情で、学生の時はまさに真っ只中だから「わかる!共感できる!」って思っていたことが、懐かしい感覚に変わってしまったのだと思う。

 

長い前置きをしたところで、私が一番好きな作家さんである辻村深月の話をしたい。

 

私は辻村ワールドが大好き

辻村深月の本を初めて読んだのは、多分高校三年生だったと思う。デビュー作の「冷たい校舎の時は止まる」を読んで、登場人物たちとほぼ同年代の自分を重ねた。すごく面白いと思ったけど、この本は青春ミステリーでビビりな私はちょっと怖い部分があったもんだから、他の本にまで手が出せなかった。あと、普通に受験生で本読んでる暇がなかったのが大きいかもしれない。

 

大学生になって、電車に1時間乗る生活が始まってから私の読書熱が再燃。というか乗車中にやることなくて暇なので本を読みまくっていた。なんとなく行った本屋さんで辻村深月の名前を見つけて、以前読んだ本を思い出した。本屋さんにあったポップに「辻村ワールドへようこそ!」とでかでかと書かれていて、なんじゃそりゃと思ってちょっと調べると、辻村深月作品はちょっとずつリンクしているということを知った。

そういう裏話的なものが大好きな私は、そんな面白い本があるのですかと興奮しながら「凍りのクジラ」を買ったのです。

 

もうこれにドはまりした。ものすごく面白くて、共感して。終盤を読んでいるときは電車の中で泣いた。主人公が斜に構えてる感じで、ちょっと暗い話なのですが、大学受験期に家族と喧嘩したりでいろいろあった私にはものすごく刺さった。

 

辻村深月の本を買うと間にはさまっている広告に

「私のいちばんの理解者をみつけた気がした――」ある10代の読者は、辻村作品との印象的な出会いを、こう語ってくれました。

 という一文があるのですが、私もまさにそれだった。

 

この本を皮切りに、私は刊行されている辻村深月の本を買い漁った。本を読むのが楽しくて、夜眠る時間も惜しい。そんな感覚は久しぶりで、とても楽しかった。

あまり本を読み返したりしないタイプなのですが、辻村作品はそれぞれ5回は読み返している。もう伏線がわかっていても、文章に隠された秘密がわかっていても、登場人物の本性を知っていても、それでも存分に面白い。 

青春ミステリーな話もあれば、女のどろどろしたところもある。地方コンプレックスの話も。爽やかからどろどろまで。それが面白い。あーわかる、って思う感情がいっぱい転がってる。そんな辻村作品が大好き。

 

 

辻村深月の本は大体読んでいると思っていたけれど、私が仕事でひーひー言って読書から離れていたこの2年の間に、辻村深月本屋大賞を取っていた。

本屋さんには時々行っていたけれど、移動時間に本を読むことがほとんどの私は専ら文庫本派で、単行本コーナーをみる習慣がなかったし、とにかく本屋さんには仕事関連の本を探しに行っていたので、小説を読むなら、今持っている本を読み返していたしで、小説コーナーすら縁遠いところになってしまっていた。

 

今日、祝!本屋大賞受賞!の大きなポップを見かけて、私は本屋さんで「ああ辻村深月…」と、必死に本を読み漁っていたあの頃の感覚を猛烈に思い出して、なんとも言えない感情でいっぱいになった。

こんな気持ちにさせてくれる作家は、私にとって彼女しかいないのだと思う。高校生の頃から読んでいて、登場人物に共感して、一緒に成長して、大人になって本を読み返した今は懐かしい気持ちにさせてくれる。そんなお話と出会えたことがとっても幸せだと思う。

 

もちろん本屋大賞を受賞した「かがみの孤城」は購入した。毎年思うけど、本屋大賞をとるとどうしても「今旬な作家!」的な扱いになるのがなんか嫌だ。その本以外にも面白い本がたくさんあって、書店員さんもそれを知っているからその作品を押したのだとわかっているけど、今旬じゃなくてずっと旬だった作家さんなのに…と思ってしまうのです。

そこで、今日は私が好きな辻村作品トップ3をご紹介しようと思う。私は辻村深月に傾倒しているので、どの作品も大好きだし、どれも素晴らしい読み物だと思うけれど、個人的に選ぶならこれ、というのがある。

※私は本に詳しい人間でもなんでもなく、ただただ辻村深月が好きなだけですので、見当違いのことを書いていたとしても見逃してください。すべて個人の意見です。

 

私が好きな辻村作品トップ3

第三位「スロウハイツの神様」 

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

スロウハイツの神様(上) (講談社文庫)

 
スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)

スロウハイツの神様(下) (講談社文庫)

 

 上述の辻村ワールドというのは、辻村作品そのものでもあるけれど、私は作品同士がリンクしている世界のことだとも思っている。主に初期に発売された本がリンクしているのだけれど、ここで大切なのはどの順番で読むかということです。

上下巻でもないのに本を読む順番も何もないだろうと思ってしまうところですが、この順番を守ることで楽しみ方が何倍も変わってくる。これが辻村作品の難しいところであると同時に面白いところである。ひとつの作品ですべて完結させてくれないなんて、と思う時もあるけど、それがまたいい。大好きだったあの人が、ここでこうやって生きているとわかる状況を、まさかと思うタイミングで他の本でみられる、それがとても楽しい。

そんな辻村リンクの最高潮は個人的に「名前探しの放課後」という作品だと思っているのですが、なぜそれでなく「スロウハイツの神様」が第三位なのかというと、伏線回収が本当に気持ちいいからというところに尽きる。あと主人公のまっすぐさとピュアな恋愛ものなところが好きだからというのもある。

初期作品では特に文章の量がすごい辻村作品ですが、この作品は後半の疾走感がすごく気持ちいい。ページをめくる手がとまらないとはまさにこのことかという感じ。もしかして前編全部が伏線だったのでは?と思うほど気持ちよく繋がっていく話が本当に面白い。ミステリー的な話の時はやや怖いシーンもあるのが辻村作品(ビビりな私比)ですが、この作品はそういう怖いシーンがないのもいい。

 

第二位 「家族シアター」

 

家族シアター (講談社文庫)

家族シアター (講談社文庫)

 

 家族をテーマにした短編集。最近文庫も出たので手に取りやすくなった。

7本の短編から成っているのですが、そのどれもがわかる!の連続です。家族の近すぎて傷つけあってしまうところが、短編でもこんなに出てるのってすごい。どの話も面白いのですが、中でも私は「タマシイム・マシンの永遠」という短編が好き。今となってはこのタイトルだけで、なんて素晴らしい作品なのだろうと思ってしまう。

辻村深月ドラえもんが大好きで、作品でもドラえもんひみつ道具が出てくることがあるのですが、それがとても面白い。このタマシイムマシンもドラえもんひみつ道具のひとつで、私はその存在すら知らなかったけど、とにかく素敵ないい話なのです。自分が確かに経験していたけど、忘れてしまっていた記憶を思い出させてくれる話。この短編集のなかで多分、最も短い話だけど、私の中で最も印象深い話。この話を読めて本当によかったと思える。

本当は「タマシイム・マシンの永遠」を読んで思ったこと、泣いてしまったこと、ブログらしく自分の思いを書き綴りたい気分でいっぱいなのですが、もうそうなるとネタバレ必須なので我慢します。是非、読んでください。読んだ方は語り合いましょう。

 

第一位 「凍りのくじら」

 

凍りのくじら (講談社文庫)

凍りのくじら (講談社文庫)

 

私が辻村深月を大好きになったきっかけの本。

辻村深月作品の中でも暗い方に分類されると思うこの本ですが、私は本当に大好き。家族の強さ、やさしさ、愛情ってこういうことかって思い出させてくれる本。主人公は高校生で、辻村作品に登場しがちなちょっと鬱屈した感じ。自分以外はみんな馬鹿だと思ってるみたいな。主人公に共感できない人、辻村作品の中でもこの本の主人公が一番嫌いだという人もたくさんいると思う。それでも私はこの本の主人公・理帆子が大好きだし、共感できる。

この本ではとにかくドラえもんがたくさん出てくる。ひみつ道具もそうだし、藤子・F・不二雄も。この話に出てくるドラえもんを知ってから、私のドラえもんのイメージががらっと変わった。子供のためのただのアニメじゃないのかもしれないと思った。

辻村作品と関係ないけれど、私がドラえもんで一番好きなのはのび太くんのおばあちゃんです。おばあちゃんが発するすべての言葉がのび太くんへの愛情にあふれてて、大事に思ってもらえるってこういうことかって思うところが本当に大好き。そういう愛情と同じものをこの「凍りのくじら」からは感じる。この本もネタバレしないで感想を話すのは本当に難しい。のでとにかく読んでほしい。

 

 

最後に

辻村深月はミステリー作家だとよく言われるけれど、私はなんだか違う気がしている。うまくいえないけど、ただのミステリー作家ではないのだ。

あの時の私は確かにそう思っていた、その感覚知ってる。そう思えるような瞬間、自分でも忘れてしまっていたような気持ちをしっかり思い出させてくれる素敵な作家さんなのだ。きっと私はこれから先も、忙しい生活の中でそんな気持ちを忘れては辻村作品を読んで思い出す。そんなことを繰り返すんだと思う。単純にフィクションとして面白いのもあるけれど、今ある大事なもの、かつて持っていた大事なことを大切にしていこうと思わせてくれる作品がたくさんある、それが私が辻村深月が好きな理由だと思う。

 

私はこれからも辻村深月がずっと大好きだし、ずっと読んでいく。